【試合レポート】 5月4日(土) NTTリーグワン2023-24第16節VS三重ホンダヒート
チームの課題、現在地が見えた一戦。来シーズンにつなげていく
5月4日(土)三重交通Gスポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場にてNTTジャパンラグビー リーグワン2023-24第16節三重ホンダヒート戦が行われた。今節はコベルコ神戸スティーラーズにとって今シーズン最後の戦いとなる。ホストゲーム最終戦となった前節静岡ブレーレヴズ戦と同様に「今シーズン取り組んできた神戸ラグビーの集大成を発揮しよう」と敵地へ乗り込んだ。会場には関西や関東から大勢のSteel Matesの姿があり、応援してくれる方々のためにも勝利を届けたい。
その思いの通り、神戸Sがいきなり見せる。FB李が相手のキックをハーフライン付近でキャッチすると、すぐさま攻撃に転じ、SOガットランドが右端にいるCTBラウマペへとキックパス。キャッチしたCTBラウマペがボールを足にかけると、WTB濱野がキープし、そこから連続攻撃。相手に反則が出て、ゴール前でのラインアウトのチャンスになると、バックスへと展開し、最後はSOガットランドの飛ばしパスを受けたWTB松永がインゴールへ(3分)。ゴールキックも決まり、7-0とする。幸先の良いスタートを切るも、相手は気迫のこもったプレーで激しくプレッシャーをかけてくる。8分、神戸陣ゴール前での三重HボールのラインアウトからFWの連続攻撃を受け、最後はSHがボールを持ち出し、失トライ。ゴールキックも決まり、7-7とゲームは振り出しに戻る。その後、神戸Sは、14分、ハーフライン付近から展開すると、テンポよくボールを動かし、最後はCTBラウマペがゴールラインを駆け抜ける。ゴールキックも決まり、14-7と再びリードを奪う。主導権を握りたいところだが、なかなか自陣から脱出できない。そこで神戸Sにハイタックルの反則が出て、自陣ゴール前で三重Hボールのラインアウトに。そこから連続攻撃を仕掛けられ、最後は神戸SでもプレーしたCTB重がトライ。ゴールキックも決まり、再び同点にされてしまう。拮抗した展開が続く中、30分にはPGで加点され14-17と逆転を許す。重苦しい空気を払拭したのは、ベテランSH日和佐。ハーフライン付近でSOガットランドがタックルを見舞って、反則を得ると、SH日和佐が速攻を仕掛ける。連続攻撃からWTB濱野がラインブレイクし、敵陣深くに。そこで三重Hに反則が出ると、サインプレーから最後はFLララトゥブアがインゴールへ(35分)。ゴールキックも決まり、21-17とする。前半終了間際、相手にゴール前まで迫られるも、ここはしっかり守り切って、4点リードで折り返した。
三重Hのキックオフではじまった後半。ミスや反則があり自陣でのプレーが続いたが、粘り強くディフェンスし凌ぎ切ると、WTB松永のラインブレイクがあり、敵陣へ。反則を得て、ゴール前ラインアウトに。そこでモールを押し込み、HO松岡がトライ(9分)。ゴールキックも決まり、28-17に。その後、サベアに代わりNO8に入ったポトヒエッターが得意のジャッカルを決めたり、SH日和佐の好走があったりするも、スコアには結びつかない。逆にミスからボールを奪われて攻撃を仕掛けられトライを献上。ゴールも決まり、28-24と差を詰められる(15分)。相手のペースとなる中、必死のディフェンスを見せ、自陣ゴール前でLOレタリックがボールを奪いピンチを脱するも、28分、ゴール前10mラインアウトから連続攻撃を仕掛けられ、逆転のトライを献上。さらにゴールキックも決まり、28-31に。残り時間は、10分。途中出場のFB伊藤がカウンターアタックからCTBに入った李へとオフロードパスを繋いで連続攻撃を仕掛けて敵陣深くに入るが、ディフェンスに阻まれてしまう。チャンスを得るも仕留めきれず、刻々と時間が過ぎていく中、途中出場のSH小畑がインゴールで相手のキックをチャージする。そこでゴール前でのマイボールスクラムのチャンス。ボールを動かし、ゴールライン寸前まで迫ると、相手に反則が出る。38分、ゴール前でのマイボールラインアウト。ぐいぐいとモールを押し込み、前進すると、松岡から代わったHO北出が再逆転のトライ。33-31と試合をひっくり返した。ラストワンプレー、神戸Sはマイボールをキープし、そのままリードを守り切りノーサイド。2点差で辛くも勝利を掴んだ。
試合後、レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(HC)は
「今シーズン、我々がプレーオフに進むことができなかったことを表した内容になってしまいました。三重Hは最下位を免れて入替戦に臨もうという思いがあったと思います。強い気持ちで我々に向かってきて、熱量の部分で完全に負けていましたし、フィジカルの面でもプレッシャーを受けてしまったところがありました。前節の静岡BR戦は良いパフォーマンスを発揮することができましたが、今シーズン最後の試合が、このような形で終わり残念です」と勝利の喜びはなく、悔しそうな表情を見せた。
共同キャプテンのレタリックも
「残念な気持ちで神戸に帰らなくてはいけません。唯一良かったことは綺麗な形ではなかったですが、最終的に勝ちを収めたことです。今日の試合から学んだことを来シーズンにいかしていかなければいけません」と反省する。
プレーヤーオブザマッチに選ばれたSH日和佐は、
「チームとしてやりたいことができた場面も多かったのですが、簡単にボールを手放してスコアができず、フラストレーションのたまる展開になりました。途中テンポを上げたかったこともあり、クイックタップから速攻を仕掛けてテンポアップを図ったのですが、周りの選手がついてきていないという状況もありました」と話し、皆が同じ絵を見ることができていなかったと振り返る。
チームは、今シーズン、9勝6敗1分勝ち点45を上げ、リーグワン発足以来最高順位となる5位でシーズンを終えた。
SH日和佐は
「どの選手もフィジカルが強いですし、スキルもあります。トップ4に入るポテンシャルはあると思うので、みんなが1枚の絵を見られるようになれば、もっと良くなると思います」と話す。
レニーHCは
「プレッシャーをしっかりかけて相手のディフェンスの時間を長くさせることができていれば、簡単な形で試合を進められるのに、それができないなど、チームは学んでいる途中であることが、今日の試合でよくわかりました。チームには多くのエリアで課題があります。今後、レベルアップできるように取り組んでいきます」
と、来シーズンの強化に目を向けた。
そして今節は、今後の成長が楽しみな選手がデビューを果たした。後半23分にグラウンドに入ったアーリーエントリーのFB伊藤について、レニーHCは
「将来性のある選手です。本来ならクオリティの高いラグビーをしている時間でグラウンドに出してあげたかったのですが、その中でもオフロードパスからチャンスメイクするなど才能を発揮していました。彼がリーグワンの強度を感じられたことは良かった」と語った。
伊藤自身は
「1度キックミスをして、ピンチを招いてしまったところは反省ですが、ランやオフロードパスといった持ち味を出すことができて、良いところと悪いところ、両方が出たデビュー戦になりました。精度を含めて、すべての面でレベルアップできるよう取り組んでいきます」と笑顔を見せていた。
神戸スティーラーズの今シーズンの戦いが幕を下ろした。
リーグ戦通算最多出場記録を更新したPR山下(裕)は、
「レンズ(レニーHC)が指揮を取って1年目。プレーオフには進めなかったですが、昨シーズンの9位から5位に順位を上げることができたことは良かったのかなと。ただ、この成績で満足してはいけません。僕は明日から来シーズンに向けてトレーニングします」と上を見据える。
この日の天気のようにスカッとした勝利をSteel Matesにお届けしたかったという思いは強いが、チームの課題と現在地、そして、それぞれの選手が何を身に付けないといけないのかが見えた最終戦となったのではないだろうか。神戸スティーラーズはこの一戦で掴んだものを、来シーズンの成長へつなげていく。