2022年度退団選手インタビュー Part.2 寺田 桂太選手&JD・シカリング選手
寺田 桂太
KEITA TERADA
身長198cmと、日本人選手最長身ロックとして活躍が期待されましたが、入団1年目の昨シーズン、腰の怪我をし、ほとんど練習ができずにシーズンが終了。今シーズンは、チームメイトと切磋琢磨し、バックボーンとしてチームを支えてきました。2シーズンという短い間ではありましたが、「『神戸ラグビー』という、これまで経験したことのないラグビーをしてきて、多くのことを学びました」と話します。今後はチームを離れ、新しいステージで試合出場を目指すという寺田選手に、神戸ラグビーのことや、チームに期待することなどを聞きました。(取材日:2023年5月17日)
PROFILE
- 生年月日/1995年2月1日
- 出身/京都府京都市
- 経歴/伏見工業高校(現・京都工学院高校)→帝京大学→近鉄ライナーズ(現・花園近鉄ライナーズ)→宗像サニックスブルース→コベルコ神戸スティーラーズ(2021年度入団)
- ポジション/LO
- 2022–23シーズンまでの公式戦出場回数/—
みんなと一緒にハードワークしたことは
一生の思い出になります!
2シーズン、お疲れ様でした。1年目は怪我をされていましたね。
「チームに合流して1ヶ月ほど経った時、練習で腰を痛めてしまって…。結局、手術することになり、復帰したのはシーズン終盤でした。宗像サニックスブルースから移籍し、心機一転頑張ろうと気合が入っていたのですが、出端をくじかれた形になってしまって…。けど、今シーズンは、大きな怪我なく過ごせて、いろいろなことが吸収できた1年になりました」
「神戸ラグビー」はどうでしたか?
「『神戸ラグビー』は、FW、BK関係なく、全員が連動しながら、フェイズを重ねて相手を崩していきます。これまで経験したことがないラグビーだったので、難しかったですが、その反面、面白さも感じました。そういうラグビーに触れて、ハンドリングスキルなどレベルアップできたと思います」
「神戸ラグビー」のどういうところに難しさを感じましたか?
「『神戸ラグビー』は、個人で局面を打開するラグビーではありません。パスをつないで相手のディフェンスを崩していくラグビーなので、みんなが連動して動かないといけない。そこに難しさを感じました。ただ、いろいろなスタイルのラグビーがありますが、基本的なプレーは変わらないのかなと。そういうことが分かったことも収穫です」
2シーズンで印象に残っていることはありますか。
「ウェイン(・スミス)から指導を受けたことです。1年目は、怪我をしていたこともあり、外から練習を見ているだけだったんですが、今シーズンは、実際にグラウンドで指導を受けて、ウェインのラグビー哲学に触れられて、とても為になりました。あとは、近鉄(現・花園近鉄ライナーズ)時代に指導を受けたカンビーと、神戸スティーラーズで再会できたことも印象に残っていますし、嬉しかったです。急逝という予想外の形でお別れすることになり、近鉄ライナーズにいた時から成長したところを見せることができなかったのは心残りですが、カンビーと再び一緒のチームでやれたことも良い思い出です」
神戸スティーラーズに入って、影響を受けた選手はいるのでしょうか。
「昨シーズン、チームを退団したトム(・フランクリン)ですね。神戸スティーラーズに入団する前から、ハンドリングの上手さやチームのためにハードワークする姿勢を見て、素晴らしい選手だと思っていたんです。実際に一緒にプレーし、やっぱりすごい選手だなと思いました。トムもいろいろとアドバイスしてくれて、ありがたかったです。トムから言われたことは、基本的なことをどれだけ精度高くできるかということでしたね」
今後もラグビーは続けるのでしょうか。
「続けます。この2シーズンで成長できたと感じていますので、次のステージでレベルアップしたところを見せることができるようにしたいです」
今シーズン、チームは9位という成績に終わりましたが、神戸スティーラーズに期待することは?
「昨シーズンは7位、今シーズンは9位と2シーズン続けて、結果が伴わなかったですが、全員で優勝を目指してハードワークしてきました。お互いに声をかけあって、一生懸命トレーニングしてきて、僕を含めて全員が成長したと思いますし、来シーズンは絶対に良いシーズンになると信じています。苦しいシーズンを経験したからこそ、これを無駄にしないで、来シーズンにつなげてほしいです。優勝を狙えるチームだと思いますので、もう一度強い神戸スティーラーズを目指して頑張ってください」
チームメイトにメッセージをお願いします。
「今シーズンは、『神戸ラグビー』の詳細を突き詰めることができなかったように思います。どの選手も能力が高いので、意思統一ができれば、きっと良いラグビーができる。みんなが努力してきたことを知っているので、来シーズンは結果を出してほしいと思います。心から応援しています」
メッセージからチームメイトに対する愛情が伝わってきます。
「みんな、本当にあたたかく迎えてくれて、いい人ばかり。公式戦には出られなかったことは悔しいですが、みんなと出会えて、一緒にハードワークできたことは一生の思い出になります」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「今シーズンは新型コロナウイルスによる制限が緩和され、Steel Matesを身近に接する機会が増えました。皆さんと交流できたことも良い思い出です。また、Steel Matesはホストゲーム、ビジターゲームにかかわらず、スタジアムに足を運んでくださり、大きな声援を送ってくれました。一緒に戦っているように感じられて、選手にとっても心強かったです。僕はチームを離れて次のステージでの活躍を目指しますが、神戸スティーラーズを応援する気持ちは、皆さんと同じです。これからもチームの応援をよろしくお願いします!」
JD・シカリング
JD SCHICKERLING
入団2年目の今シーズン、13試合に出場。第8節静岡ブルーレヴズ戦では、相手ボールラインアウトのスティールを始め、献身的なプレーでチームに貢献し、プレイヤーオブザマッチに輝く活躍ぶりを見せました。シカリング選手にとって、母国である南アフリカ以外でプレーするのは、神戸スティーラーズが初めてのこと。「ラグビーも、日本での生活も、一体どんなものになるのか予想できなかったのですが、素晴らしい時間を過ごすことができました」と笑顔を見せます。グラウンドを出たら、おだやかな笑顔が印象的なビッグマンに、神戸スティーラーズでの2シーズンを振り返ってもらいました。(取材日:2023年4月26日)
PROFILE
- 生年月日/1995年5月9日
- 出身/南アフリカ・ケープタウン
- 経歴/パールジムナジウム高校(南ア)→ウエスタンプロヴィンス→ストーマーズ(SR)→コベルコ神戸スティーラーズ(2021年度入団)
- ポジション/LO
- 2022–23シーズンまでのチームでの公式戦出場回数/23
日本に来る前は不安な気持ちもありましたが、 グラウンド内外で素晴らしい時間を過ごしました。
今シーズンは、プレイヤーオブザマッチに選ばれるなど、大活躍でしたね。
「入団2年目になり、『神戸ラグビー』に慣れたことが大きかったと思います。スタッツも良くて、他チームのロックと比べても、上位だったので、チームの成績は芳しくなかったですが、個人的には満足のいくパフォーマンスを発揮することができました」
—シカリング選手は、今回、初めて南アフリカ以外の国でプレーしましたが、どのようなことが難しかったですか?
「ラグビーに関しては、日本はゲームのテンポが速いと聞いていたので、ある程度 予想していたのですが、実際、思っていた以上でした。スピードに適応していくことは大変でしたが、1シーズンかけて慣れていくことができました。あと、生活面に関しては、最初は言葉がまったくわからなかったのですが、妻と2人で簡単な日本語を学んで、今では日本語でオーダーができるようになりました。1年目はまだ新型コロナウイルスの影響も大きく、なかなか遠くへは出かけられなかったですが、六甲アイランドや神戸の街を散策するのも楽しかったです」
日本食や神戸を満喫された?
「しましたね。特に食事の面は、どこのレストランに行っても美味しくて、日本食が好きになりました」
プレイヤーオブザマッチに選ばれた時、賞品として神戸ビーフをプレゼントされましたね。
「エパ(カウリートゥイオティ)の家族と数名の選手を自宅に呼んで、神戸ビーフパーティをしました。2kgいただいたのですが、美味しくて、あっという間になくなりましたね。南アフリカに戻っても、神戸ビーフや焼肉は恋しくなると思います」
チームでの活動で印象に残っていることはありますか。
「一緒にハードワークするチームメイトとオフの日に、食事をしたことが印象に残っています。日本人選手、外国籍の選手関係なく、食事をしながらラグビーの話をして、チームメイトとの思い出は忘れることができないですし、この友情は、チームが別になったともしても、一生続くものだと思います」
グラウンド内外で良い経験をした2シーズンだったんですね。シカリング選手は公式戦23試合に出場しましたが、思い出深い試合というのは。
「やはりプレイヤーオブザマッチに選んでいただいた今シーズンの静岡ブルーレブズ戦です。あの試合は、スカウティングもバッチリはまって、相手のラインアウトを奪えましたし、マイボールラインアウトも安定していました。試合も終了間際に李(承信)がPGを決めて劇的な勝ち方をし、私にとってスペシャルな一戦になりました」
日本でプレーし、成長したところや収穫はありましたか?
「速いテンポで展開するラグビーを経験できたことは収穫です。今後、どの国でラグビーをするにしろ、この経験を活かすことができると思います」
昨シーズンは7位、今シーズンは9位とチームは求めている結果を得ることができなかったですが、神戸スティーラーズの良さはどこにあると思いますか?
「ラグビーに関していうと、『神戸ラグビー』の魅力はアタックにあります。今シーズンはディフェンスの時間が長くなってしまいましたが、アタックでは良いところがたくさんありました。来シーズンはそういう場面を増やしてほしいですね。あと、オフフィールドでは、Steel Matesをはじめ、サポートしてくれる方々との結束の強さも神戸スティーラーズの良いところだと思います」
今後、チームに何を期待しますか。
「今シーズンは一貫性が欠けていたように感じています。コーチ、選手と全員が目指す『神戸ラグビー』において、同じビジョンを持つことができていたのかと言われると、どうか。シーズンが終わって改めて振り返った時、それぞれが違うビジョンを持っていたように感じています。来シーズンは全員が同じビジョンを持って、お互いを信頼し合うことができれば、チームの中に火が灯り、やがてそれが大きな炎になっていくんじゃないかな。神戸スティーラーズには良い文化があり、才能豊かな選手がたくさんいます。今シーズンのような成績で終わるチームではありません。チームに関わる全員がハードワークし、来シーズンは求めている結果を得られるようにしてほしいですね」
チームメイトにメッセージをお願いします。
「オフフィールド、オンフィールドで楽しい時間を過ごすことができ、感謝の言葉しかありません。神戸スティーラーズを退団するのは寂しいですが、お互いに頑張りましょう」
先ほど神戸スティーラーズの良いところに、Steel Matesとの結束力の強さを挙げていましたが、チームにとってファンの存在とはどういうものでしょうか。
「Steel Matesはチームがどんな状態でも愛を持って全力で応援してくれました。南アフリカでは、チームの成績が悪い時は、敬意を欠くようなことを言ってくるファンも多いのですが、神戸スティーラーズではチームが負けた時でもあたたかい拍手を送ってくれました。Steel Matesは、常にチームに寄り添ってくれる心強い存在です」
第16節ではマルセル・クッツェー選手とチームブース近くでファンサービスをされていましたね。
「あの日はとても暑くて、汗を掻きながら、サインや写真撮影に応じていました。選手にとって、自分が応援されていることを感じられるのは、本当に嬉しいことです。昨シーズンは新型コロナウイルスの感染予防対策で、なかなか交流することができなかったですが、第16節はメンバーから外れたこともあり、チームブースでファンサービスを行うことができました。たくさんの方々から声をかけられて、笑顔をもらって、こんなにも多くの方々からサポートをしてもらえているんだと感じることができ、最高の経験になりました」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「すべての試合で大きな声援を送っていただき、ありがとうございました。どんな時でもチームを応援してくれたSteel Matesのことは一生忘れません。これからも神戸スティーラーズの応援よろしくお願いします」