2022年度退団選手インタビュー Part.3 粥塚 諒選手&マルセル・クッツェー選手
粥塚 諒
RYO KAYUTSUKA
FWの中でNo.1のスピードとフィットネスを誇る入団3年目の粥塚選手。なかなか試合出場のチャンスが巡ってこなかったですが、昨シーズンの第12節NECグリーンロケッツ東葛戦でリザーブに入り、公式戦デビューを果たすと第14節クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦でも後半18分からグラウンドへ。結局、出場はこの2試合のみとなってしまいましたが、チームでたくさんのことを学ぶことができたと話します。悔しさも入り混じった3シーズンの経験を糧に、粥塚選手はさらなる成長を誓います。
(取材日:2023年5月17日)
PROFILE
- 生年月日/1997年7月30日
- 出身/茨城県つくば市
- 経歴/ツクバリアンズジュニア→流通経済大学ドラゴンズU15→流通経済大学付属柏高校→流通経済大学→コベルコ神戸スティーラーズ(2020年度入団)
- ポジション/FL
- 2022–23シーズンまでのチームでの公式戦出場回数/2
試合に出られず悔しさもありますが、
ラグビー選手として成長できた3シーズンです。
3シーズン、お疲れ様でした。在籍した3シーズンを振り返って、どうでしたか?
「トップリーグで2度優勝したチームで、自分がどこまで通用するのか、楽しみにしていたのですが、まったく力を発揮できなくて…。もっと試合に出て活躍したかったという思いが強いです。ほかにも何かできたことがあったんじゃないかと思いますし、悔いが残る3シーズンになりました」
入団1年目、印象に残っていることはありますか。
「1年目はシーズン通して怪我が多かったです。その中で印象に残っているのは、初めて出場したプレシーズンマッチ宗像サニックスブルースです。スタメンで起用していただいたのですが、『神戸ラグビー』にまだ慣れていなかったこともあり、チームのシステムを遂行できなくて、コーチ陣からの信頼を失うことになり、悔いが残る試合になりました。それからなかなかチャンスが巡ってこず、昨シーズン、ようやく公式戦に出ることができました」
初めて出場した第12節NECグリーンロケッツ東葛戦はどうでしたか?
「緊張することなく、いつも通り試合に臨めたのですが、出場時間も短くて…。次に出た第15節クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は何度かミスをしてしまい、成長したところを見せることができず残念に思いました」
3シーズンで成長したところとは?
「今シーズン、マルセル(・クッツェー)からジャッカルについて、こと細かく教えてもらって成長できましたし、この3シーズンを振り返れば、入団1年目はガズ(ブロディ・レタリック)が在籍していて、よくブレイクダウンのスキルを教えてもらいました。また、2人だけでなく、同じポジションのジュニアさん(橋本 皓)にもタックル練習に付き合ってもらって、アドバイスをもらいました。神戸スティーラーズはどの選手も意識高くラグビーに取り組んでいて、そういう姿勢を間近で見られたことも勉強になりました。ラグビー選手として成長することができた3年間でしたので、今後は神戸スティーラーズでの経験を活かして、次のステージでは活躍できるよう頑張ります」
これからもラグビーを続けると。
「そうです。次のステージではレギュラーとして試合に出て、神戸スティーラーズで一緒に切磋琢磨した仲間や応援してくれた方々に恩返ししたいと思います」
粥塚選手にとって神戸スティーラーズとは?
「みんな、あたたかくて、優しい人ばかりで、プライベートでも仲良くしてもらって、最高のチームでした。チームメイト、スタッフには感謝しかありません」
今後、チームに期待することは?
「今シーズンは結果が出ずに苦しいシーズンになってしまいましたが、来シーズンは“強い神戸スティーラーズ”として復活してくれることを期待しています」
チームメイトにメッセージをお願いします。
「まずジュニアさんには、グラウンドでも、プライベートでも、よく面倒を見ていただきました。ジュニアさんは、キャプテンをしていて、試合にも出ていて、目標であり、憧れでもありました。一緒に試合に出たかったという思いが強いですが、3シーズン、いろいろと教えていただき、ありがとうございました。ほかの選手からも学ぶことが多く、良い時間を過ごすことができました。僕はチームを離れますが、お互いにこれからも頑張りましょう!」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「入団してから2シーズンはなかなか直接交流することができなかったのですが、今シーズンは試合会場のチームブースや『Steel Mates感謝祭』で皆様と喋ったり、サインをしたり、触れ合うことができました。改めて、ファンの数の多さに驚き、皆様のスティーラーズに対する熱い思いに触れられたことも良い思い出です。また、ファンの方から『顔に似合わず、笑顔が可愛い!』と言っていただいたことも印象に残っています。Steel Matesの存在も、神戸スティーラーズの魅力の1つだと思いますので、来シーズンも今シーズン以上に熱い応援を送ってください。そして、僕のことも引き続き応援してもらえたらと思います。短い間でしたが、応援ありがとうございました!」
マルセル・クッツェー
MARCELL COETZEE
フレンドリーで明るいキャラクターのナイスガイは、昨年11月、チームに合流すると、あっという間に仲間と打ち解け、「マーシー」のニックネームで親しまれました。持ち味は、南アフリカ出身選手らしく、フィジカルを前面に出したプレー。また、南アフリカのブルズではキャプテンを務めており、リーダーシップも併せ持ちます。橋本 皓キャプテンが負傷により出場ができなかった第4節東京サントリーサンゴリアス戦と第6節トヨタヴェルブリッツ戦では、ゲームキャプテンを務めたことも。頭に巻いた赤のテーピングに、ヒゲがトレードマークで、クッツェー選手に扮して来場するSteel Matesがいるほど、人気モノになりました。「素晴らしい時間を過ごした神戸を離れるのは寂しいですね。これからもずっと神戸スティーラーズを応援します」と話すクッツェー選手。彼の勇姿はこれからもSteel Matesの記憶に残り続けることでしょう。
(取材日:2023年4月26日)
PROFILE
- 生年月日/1991年5月8日生まれ
- 出身地/南アフリカ・ポチェフストルーム
- 経歴/ポートナタール高校(南ア)→シャークス(SR)→Honda HEAT(現・三重ホンダヒート)→アルスター(PRO14)→ブルー・ブルズ(URC)→コベルコ神戸スティーラーズ(2022年度入団)
- ポジション/No.8
- 2022–23シーズンまでのチームでの公式戦出場回数/10
- 代表歴/南アフリカ代表(31キャップ)
神戸スティーラーズとSteel Matesが大好きになりました。
またいつか会える日を楽しみにしています!
チームを離れることに対して、今の心境を聞かせてください。
「素晴らしい時間を過ごしたので、本当に寂しく思います。トップリーグ時代に2度優勝しているチームでプレーできるチャンスを得て、結果としてチームはなかなか思うような成績を残すことはできなかったですが、個人的には何ものにも代えがたい経験をすることができました。1シーズンでしたが、神戸スティーラーズでプレーして本当に良かったです」
今シーズン、チームは9位という結果に終わりましたが、何が原因だと思われますか。
「いろいろな要因が重なりあって、この結果になったと思います。連携のミスにより、相手にチャンスを多く与えてしまいましたし、後半の戦い方にも問題があったように思います。前半は自分たちのペースで試合を運べていても、後半に入り、ミスから相手に流れを渡してしまいました。ミスや反則の多さは気になりましたので、そこは来シーズン、改善してくれることと思います」
ご自身のパフォーマンスはどうでしたか?
「フィジカルを前面に出したプレーが得意なので、タックルやジャッカルといったディフェンスの面でチームに貢献しようと思っていました。個人的にはパフォーマンスは悪くはなかったと思いますが、チームの結果が伴っていなかったので、残念で仕方がありません」
第4節東京サントリーサンゴリアス戦、第6節トヨタヴェルブリッツ戦ではゲームキャプテンを務めました。
「リーダーシップのある選手が多い中で、私がゲームキャプテンに抜擢されたことに驚きました。キャプテンというのは、チームを代表して、自分たちのラグビーを先頭に立って体現していく存在です。メンバー発表の後、両親にゲームキャプテンに任命されたことを報告したら、『嘘だろう』となかなか信じてくれなくて(苦笑)。ゲームキャプテンをするとはまったく予想していなかったですが、練習から全員がサポートしてくれて、特別なことをするわけでもなく、いつも通り試合に臨めました。日本でゲームキャプテンを務めたことは、誇りですし、南アフリカに帰ってからも忘れることができない思い出になります」
クッツェー選手は2015年シーズンにもHonda HEAT(現・三重ホンダヒート)の一員として日本でプレーしています。7年ぶりに日本でプレーし、リーグ全体のレベルについてどのようなことを感じられましたか?
「2015年シーズンも、どのチームもテンポの速いラグビーしていて、日本ラグビーの特徴は見ることができたのですが、スキルの面などに関しては、まだ改善の余地はあると感じていました。それが、今シーズン、久しぶりに日本でプレーし、スキルの面を含め、すべてにおいて飛躍的にレベルが上がっていることに驚きました。それに、所属選手を見てもわかるように、リーグ自体の競争力が上がっています。どのチームも良い選手が揃っていて、実力の差がないなと。プレーヤーからするとタフな試合が続いて大変ですが、ファンからすると拮抗した試合が見られて、楽しい大会になっていると思います」
11月にチームに合流し、「神戸ラグビー」をする上で苦労されたことはあるのでしょうか。
「『神戸ラグビー』は、クイックにボールを回して、テンポが速い。直前までプレーしていたブルズも、そういうラグビーをしていたので、特段難しいことはなかったですね」
クッツェー選手が思う「神戸ラグビー」の魅力というのは?
「間違いなくアタックですね。クイックにボールを動かしてフェイズを重ねていくラグビーは、観客を魅了すると思います。私の父も、『神戸ラグビー』のアタックを気に入っていて、ワクワクすると言っていました。今シーズンはディフェンスの時間が長くなってしまいましたが、アタックに転じた時は、良いシーンがたくさん見られました。来シーズンは、アタックする時間が多いシーズンになってほしいですね」
クッツェー選手が一番印象に残っている試合を教えてください。
「ゲームキャプテンを務めた2試合も印象深いですが、一番は第5節クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦です。最後の最後、勝負どころのスクラムで、レフリーの手がS東京ベイに上がってしまいましたが、あと少しのところまで相手を追い詰めました。前の週に行われた東京サントリーサンゴリアス戦で完敗した後、そこから気持ちをしっかり切り替えて準備をし、フィジカルバトルに一歩も引かず、最後までどちらに転ぶかわからない試合をできたことは印象に残っています」
今後、神戸スティーラーズに期待することは?
「アーディー・サヴェアやブロディ・レタリックといった豊富な経験を持つ選手の加入がすでに発表されています。彼らがチームに加わることで、チーム内の競争がさらに上がって良い相乗効果が生まれると思います。あとは、今シーズン、なかなか修正できなかったミスや反則といった規律のところを改善することができれば、トップ4争いに十分絡むことができます。来シーズン、良い知らせが聞けるのを心待ちにしています」
チームメイトにメッセージを。
「あたたかく私を迎え入れてくれて、まずはお礼を言いたいですね。クラブハウスでジョークを言い合ったり、時々食事に行ったり、最高に楽しい時間を過ごすことができました。皆さんとの友情は永遠に続くものです。これからもずっと応援しています」
今後はどうされるのでしょうか?
「南アフリカに戻ってブルズで再びプレーします。ブルズの一員として、チームに貢献していきたいと思います」
クッツェー選手の退団をSteel Matesは寂しく思っています。
「第12節以降、足の怪我があり、試合に出られなかったのですが、その代わりに、チームブースでファンの方々と交流するチャンスを得られました。どれだけ素晴らしい人たちに応援してもらっているのか直接感じることができ、Steel Matesはワールドクラスのファンだと思いました。こんなにも熱く応援していただいたにもかかわらず、プレーオフに進出できなかったことを申し訳なく思います。今シーズンは、選手にとっても、応援してくれるファンにとっても、辛いシーズンになってしまいましたが、神戸スティーラーズは、下位に甘んじるようなチームではありません。来シーズンは良い結果を出してくれると思いますので、一緒にチームを応援しましょう!」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「皆様の応援に後押しされて、プレーできたことも良い思い出です。1シーズンという短い時間でしたが、応援ありがとうございました。中にはヒゲをつけて、私の仮装をして応援してくれたファンもいて、Steel Matesのことが本当に大好きになりました。またどこかで会えることを信じて、『さよなら』ではなく、『また会いましょう』と皆様には伝えたいと思います。これからも神戸スティーラーズの応援をよろしくお願いします」