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ロングインタビュー

2022年度退団選手インタビュー Part.4 トコキオ ソシセニ選手&ボーディン・ワッカ選手

2022年度退団選手インタビュー Part.4 トコキオ ソシセニ選手&ボーディン・ワッカ選手

トコキオ ソシセニ

SOSICENI TOKOQIO

しなやかな走りとパワーが魅力の「ソシ」こと、トコキオ選手。試合や練習で見せる激しいプレーから一転、グラウンドから一歩出ると、常ににこやかで、物腰が柔らかく、「ホトケのソシ」とも呼ばれていました。4月28日にクラブハウスで行われた納会の際は、チームを離れることが寂しくて、思わず涙する場面も。「神戸スティーラーズは、HOMEのようでした」と話すトコキオ選手に、神戸スティーラーズで過ごした2シーズンについて話を聞きました。(取材日:2023年5月18日)

PROFILE
  • 生年月日/1993年2月1日
  • 出身/フィジー・カンタブ
  • 経歴/ケルストンボーイズ高校(NZ)→山梨学院大学→豊田自動織機シャトルズ(現・豊田自動織機シャトルズ愛知)→コベルコ神戸スティーラーズ(2021年度入団)
  • ポジション/No.8
  • 2022–23シーズンまでのチームでの公式戦出場回数/4

みんな、あたたかくて、
HOMEのようなチームでした。

クラブハウスで行われた納会の時に、退団選手の挨拶で目をうるませていましたね。

「普段は全然泣いたりしないのですが、納会の時は寂しさで胸がいっぱいになって、自然と涙が出てきました。神戸スティーラーズは、本当にあたたかいチームで、まるでHOMEのようでした。みんなのことが大好きですし、チームを離れるのは辛いですね」

昨シーズン、豊田自動織機シャトルズ(現・豊田自動織機シャトルズ愛知)から移籍してきて、チームにはすぐに馴染むことができたのでしょうか。

「大学の先輩である、ティム(ラファエレ ティモシー)や高校時代からの友人である重(一生)がいたので、すぐに馴染むことができました。実は、重は、僕の通っていたケルストンボーイズ高校に留学してきて、僕のバディ(※相棒の意味)だったんです。学校でも一緒に行動し、仲良くなって、その後もお互いに連絡を取り合っていました。ほかのメンバーも僕のことを受け入れてくれて、新型コロナウイルスの影響でなかなか食事にいったりはできなかったですが、クラブハウスで喋ったり、ふざけあったり、とても楽しい時間を過ごすことができました」

特に思い出に残っているチームアクティビティは?

「すべてが楽しかったのですが、一番は井関(信介)の司会ですね。井関はチームを盛り上げるソーシャルグループのメンバーで、いろいろなゲームを考えて、司会もしてくれるのですが、それがとにかく面白くて(笑)!毎日、クラブハウスに行くのが楽しかったです」

ラグビーの面ではどうでしたか?

「早いテンポでスペースにボールを運んでいく『神戸ラグビー』は、やっていてすごく楽しかったです。初めて経験するラグビースタイルだったので、どうやったらフィットするか考えて、体を絞るなど努力もしました。あと、チームは、基本スキルを大事にしていて、パスやジャッカル、タックルなど、練習前に10分ほど、必ずスキルセッションがありました。お互いにアドバイスをし合って、いい練習ができて、スキルの面でレベルアップしたと感じることができたのも収穫です」

神戸スティーラーズに入り、トコキオ選手がラグビーの面で影響を受けた選手はいるのでしょうか。

「(中島)イシですね。ポジションは違いますが、一緒にトレーニングをすることが多くて、影響を受けましたし、たくさんの刺激をもらいました。今シーズンは、チームのオフ期間中に、イシの自宅に1週間滞在し、一緒にトレーニングをしたんです。イシのトレーニングは、代表に選ばれたのも納得できるくらいハードなものです。また、イシはプロップに転向する前は、僕と同じナンバーエイトだったので、プレーに関してもアドバイスをしてくれて、充実した時間を過ごすことができました」

トコキオ選手は2シーズンで4試合に出場しましたね。

「もっと試合に出たかったというのが、率直な思いです。1年目のシーズンは第1節に途中出場したのですが、脳震盪を起こし、そのまま交代することになってしまいました。その後、練習に復帰したのですが、膝を負傷し、それから復帰までに10週間もかかって…。終盤の第13節埼玉パナソニックワイルドナイツ戦、第16節NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(現・浦安D-Rocks)戦にはリザーブで出場しましたが、1年目は、脳震盪、膝の怪我と続いて、とても悔しかったです。今シーズンはレギュラーを取ろうとプレシーズンから良い準備をしていたのですが、チャンスがなくて。第6節トヨタヴェルブリッツ戦は、神戸スティーラーズに入団し、初めての先発出場だったのでプレーできるのが楽しみでした。それに、この一戦は、チームとしてターゲットにしていて、絶対に勝って勢いに乗ろうと一丸になって臨んだのですが、ディフェンスの時間が長くなって、厳しい試合になってしまいました。僕自身も持ち味であるボールキャリーを出せる場面がなくて…。その後の戦いでもチームはなかなか波に乗れなくて、こんなにも良い選手がたくさんいるのに、なぜ勝てないのだろうと不思議でしたし、試合に出てチームの力になりたいと思いながら過ごしていました」

4月29日に開催された「Steel Mates感謝祭」で退団選手の挨拶の際、間違えて「引退する」と述べられましたが、今後もラグビーを続けるんですよね。

「続けます!挨拶の時は、『退団』という言葉を知らなくて、『引退』と言ってしまって、ステージの下にいたアタ(アタアタ・モエアキオラ)から『違うよ!退団だよ』と教えてもらいました(笑)。神戸スティーラーズで、たくさんのことを学べたので、それを活かすことができるよう今後も頑張ります」

来シーズン、チームに期待することは?

「来シーズンは結果を出してほしいと心から思います。すでに発表されているようにオールブラックスの選手も加わりますし、ヘッドコーチも代わります。新しい神戸スティーラーズに生まれ変わって、トップ4入りし、最終的には頂点に立ってほしいです」

チームメイトにメッセージをお願いします。

「神戸スティーラーズはとても良いチームで、みんなのことを本当の家族のように思っていました。チームを離れるのは寂しいですが、これからもずっと応援しています。2シーズン、本当にありがとうございました」

では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。

「今シーズンは雨の試合が多かったですが、天気が悪い中でも、たくさん方々が応援に来てくれました。また、4月29日の『Steel Mates感謝祭』も途中から大雨になりましたが、最後まで残ってくれて、嬉しかったです。皆さんの神戸スティーラーズ愛を感じられた2シーズンになりました。チームは2シーズン続けて、皆様の期待に答えることができなかったですが、来シーズンは勝ちます!僕はチームを離れますが、皆様と一緒にチームを応援します。引き続き、神戸スティーラーズの応援よろしくお願いします!」

ボーディン・ワッカ

BEAUDEIN WAAKA

7人制ニュージーランド代表で活躍し、アメリカ・メジャーリーグラグビーでは22年シーズン、司令塔としてチームを初のプレーオフ進出に導きました。神戸スティーラーズでは、1試合の先発を含む6試合に出場。「カテゴリーの関係もあり、なかなかプレータイムを得られなくて」と悔しそうな表情を見せますが「日本でプレーする機会を与えていただき、チームには感謝しかありませんね」とも。ニュージーランドへ一時帰国した後、すぐにアメリカの古巣でプレーするというワッカ選手のラストインタビューをお届けします。(取材日:2023年4月28日)

PROFILE
  • 生年月日/1994年1月27日
  • 出身地/ニュージーランド・ファカタネ
  • 経歴/キズボーンボーイズ高校(NZ)→タラナキ(マイター10)→ニューイングランドフリージャックス(MLR)→コベルコ神戸スティーラーズ(2022年度入団)
  • ポジション/SO
  • 2022–23シーズンまでのチームでの公式戦出場回数/6
  • 代表歴/7人制ニュージーランド代表

素晴らしい人たちと素晴らしいカルチャー
それが神戸スティーラーズの魅力です。

入団インタビューの際に、日本でプレーしてみたかったと話されていました。実際に日本でプレーし、どうでしたか?

「アメリカで3年間プレーしてから日本に来たのですが、この1年は、私にとって大きなステップアップになりました。チームには、オールブラックスのキャップホルダーであるナニ(・ラウマペ)やスプリングボクスで活躍するマーシー(マルセル・クッツェー)といった選手がいますし、李(承信)のように若くて才能が溢れた選手もいます。他チームにも、ワールドクラスの選手が数多く所属し、リーグ自体のレベルが高いと感じました。個人的には多くのプレータイムを得られずに残念ですし、子供の頃からの友人であるナニと一緒に試合に出たかったという思いはありますが、日本でプレーする機会を与えてくれた神戸スティーラーズに心から感謝しています。これまで経験したことがない環境でラグビーができ、チームとしては結果がついてこなかったですが、すべての時間を楽しめましたし、とても良い経験になりました」

ラウマペ選手とは子供の頃からの友達だったんですね。

「出身エリアは違いますが、学校同士でよく対戦していて、その後、ハリケーンズのアカデミーで一緒にプレーしました。それから、お互い、違う道を進んで、神戸スティーラーズで再会を果たしました。実は、私の入団が発表された時にナニから『一緒のチームでプレーできることを楽しみにしているよ』と連絡が来たんですが、その時はまだ彼の入団がリリースされていなかったので、冗談を言っていると思ったんです」

だけど、事実だったと。

「そうなんです(笑)。ナニとチームメイトとして同じグラウンドで練習をして、クラブハウスで思い出話をして、素晴らしい時間を過ごすことができました。一緒に試合に出て、2人で素晴らしいプレーを見せることができたら、最高だったのですが…。それに関しては残念に思います」

リーグワンでは第15節花園近鉄ライナーズ戦での先発出場を含めて、全6試合に出場しました。特に印象に残っている試合は?

「どの試合も特別ですね。東京サントリーサンゴリアス戦は、トップクラスの強さ、選手層を誇るチームに対し、自分がどこまでできるのかチャレンジする気持ちで臨みましたし、花園L戦は神戸スティーラーズに入って初めて『10番』を付けて出場する試合で、かつ、『関西ダービー』ということで試合前から楽しみにしていました。あえて1試合を挙げるとすれば、逆転負けしましたが、プレータイムが長かった花園L戦になりますね」

同じポジションで、ライバルである李選手のプレーはワッカ選手の目にはどのように映りましたか。

「彼は本当に多くの才能があります。ラグビーの知識も豊富ですし、スキルレベルも高い。特にキックは、高い成功率を残しています。私より年は下ですが、学べるところはたくさんあると感じましたし、彼と一緒にプレーできたことを誇りに思います。これから日本代表の司令塔として、さらなる活躍を期待しています」

李選手から学ぶこともあったということですが、神戸スティーラーズでプレーし得られたものは。

「李だけでなく、ほかの選手からも学ぶことが多くて、神戸スティーラーズでラグビープレーヤーとして成長ができたと感じています。また、コーチからも良い学びがありました。チームは今シーズン、ディフェンス面が課題でしたが、私はタイ(・リーバコーチ)からアドバイスを受けることで、ディフェンス面がこれまで以上に強みになりました。神戸スティーラーズでの経験を、今後に活かしていきたいです」

今後はどうされるのでしょうか。

「以前プレーしていたメジャーリーグラグビーのイングランドフリージャックスと再契約しました。チームには若い選手も多いので、神戸スティーラーズで得た経験や学びを伝えていきたいですね」

メジャーリーグラグビーでは、アドバイザーであるアンドリュー・エリス氏がコーチをしていますね。

「彼はラグビーニューヨークでコーチをしていて、私のチームとはライバル関係なんです。彼と再会できるのも楽しみです」

1シーズン在籍し、神戸スティーラーズの良さというのはどこにあると思われましたか。

「神戸スティーラーズの魅力は、チームを応援してくれるSteel Matesをはじめ、地域の方々だと思いますね。ニュージーランドやアメリカでプレーしてきて、チームの成績が振るわない時は、ファンが離れていくという場面を何度も見てきました。今シーズン、神戸スティーラーズは結果を得られず、苦しい戦いが続きましたが、どの試合でも多くのファンがスタジアムに足を運び、声援を送ってくれました。これはとても素晴らしいことです。だからこそ、来シーズン、選手はSteel Matesや地域の方々の期待に応えるようなパフォーマンスを発揮しないといけないと思います」

Steel Matesや地域の方々との思い出を教えてください。

「まずSteel Matesについては、メンバーに入っていない時の思い出が印象に残っています。ホストゲーム開催時、チームブースの近くでファンサービスをしたのですが、サインに応じたり写真を撮ったりして、良い時間を過ごすことができました。Steel Matesの応援があるから、僕らは頑張ることができます。そういう日頃のサポートに対してサインや写真撮影という形で、皆さんに恩返しすることができて良かったです。それから、地域の方々とも交流することがありました。六甲アイランドでのイベントでは、7人制ニュージーランド代表で私が出場した試合を見ていた方もいて、とても嬉しかったです。Steel Matesや地域の方々と会えなくなることも寂しいですね」

神戸での生活を楽しめましたか。

「とても楽しかったですね。チームメイト、コーチ、スタッフ、ファン、地域の方々。素晴らしい人たちに、素晴らしいチームカルチャー。10ヶ月という短い期間でしたが、神戸スティーラーズと神戸の街が大好きになりました」

神戸スティーラーズに期待することとは。

「来シーズンは体制が大きく変わることと思います。間違いなくチームは良い方向へと進んでいくことが期待されます。来シーズンは必ずトップ4に入って、Steel Matesや地域の方々を笑顔にしてほしいです」

チームメイトにメッセージをお願いします。

「日本という初めての環境で、知っている人もナニしかいない。来日前は不安もありましたが、チームメイトがあたたかく迎えてくれたお陰で、ホームタウンにいるような気持ちで過ごすことができました。みんなに感謝しています。チームに残る選手は、ラグビーを、この環境を楽しんで、結果を残してほしい。幸運を祈っています」

では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。

「今シーズンはチームにとって非常にタフなシーズンになってしまいました。それでも、皆様はスタジアムに足を運び、変わらぬ声援を送ってくれて、その応援がなければ、我々にとってさらに厳しいシーズンになっていたと思います。皆様の声援にとても感謝しています。私はアメリカに戻ってプレーすることになりますが、来シーズンも神戸スティーラーズと選手に熱い応援よろしくお願いします」

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