取材日:2023年7月31日
2022年度退団選手インタビューPart.6 リチャード・バックマン
リチャード・バックマン
RICHARD BUCKMAN
2018年シーズン優勝の立役者の1人。ディフェンスでは広範囲をカバーし激しいタックルを見舞い、ブレイクダウンでも勇敢にファイトする。アタックでは鋭い走りを見せ、巧みなパスを繰り出しチャンスメイク。安定感抜群のミッドフィルダーとして5シーズン、チームに貢献したリチャード・バックマン選手が、2022年度をもって退団することになりました。「バッキー」の愛称で親しまれた彼にオンラインインタビューを実施し、退団の理由やチームへの想いなどを聞きました。(取材日:2023年7月31日)
PROFILE
- 生年月日/1989年5月27日
- 出身地/ニュージーランド・ホークスベイ
- 経歴/ネイピアボーイズ高→ハリケーンズ→ハイランダーズ→パナソニックワイルドナイツ(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)
- ポジション/UTB
- 2022-23シーズンまでのチーム公式戦出場回数/33
肉体的に限界を感じ、ユニフォームを脱ぐことにしました。ニュージーランドで神戸の試合を見るのを楽しみにしています。
突然の退団発表に驚かれたSteel Matesも多いと思います。
「つらい決断になったのですが、ここ数シーズン、肉体的な理由からあまりパフォーマンスが良くなくて、限界がきていると感じていました。特に、足首の状態が悪くて、走ると炎症が起きることが度々ありました。そうなると練習にも参加することができません。昨シーズン、チームの成績も振るわず、そんな中でチームを去っていいのか非常に悩みました。チームメイトに対して申し訳ない気持ちになりましたが、考えに考え抜いた結果、出した結論です」
「NTTリーグワン2022-23」にも9試合に出場されましたし、まだまだプレーを見られると思っていました。引退されるということなのでしょうか?
「強力なライバルがいる中で試合に出られたことは良かったのですが、満足のいくパフォーマンスが発揮できなくて…。チームに貢献できなかったと残念に思います。足首のこともありますので、現状では引退を考えています。またラグビーがやりたくなったら、ニュージーランドのクラブチームでプレーするかもしれないですが、現時点ではキャリアを終えるつもりでいます」
コベルコ神戸スティーラーズは、バックマン選手にとって現役最後のチームになるかもしれないと。
「そうですね。そういう意味でもチームに対して想いは強いです。2018年シーズンは優勝を経験することもできましたし、たくさんの仲間ができて、素晴らしい思い出を作ることができました」
2018年シーズンから5年間在籍し、もっとも印象に残るシーズンというのはいつでしょうか?
「やはり入団1年目の2018年シーズンですね。チャンピオンになることができましたし、当時はコロナ禍前ということもありチーム活動ができ、選手間の絆や信頼関係が強かった。オンフィールドはもちろん、オフフィールドでも楽しかったですね」
2018年シーズンは、トップリーグのベストフィフティーンにも選ばれましたね。
「スーパーラグビーでプレーした後、少し休んでからチームに合流し、コンディションが万全でした。体の状態が良い中でベストなパフォーマンスを発揮することができました。優勝したことと同じくらいベストフィフティーンに選ばれたことも私にとってはスペシャルなことでした」
入団1年目のシーズンが一番印象に残っているとのことですが、思い出深い試合を教えてください。
「それも入団1年目ですね。サントリーサンゴリアス(現・東京サントリーサンゴリアス)とのファイナルです。シーズンを通してやってきた『神戸ラグビー』を精度高くやり切って、サントリーを大差(55−5)で破った。ラスト20分に関しては、スコアも開いて、楽しみながらプレーすることができました。チャンピオンに何度もなっているサントリーを倒して優勝できたことも嬉しかったですし、チームメイトやファンの皆様、会社の方々と喜びを分かち合うことができたことも幸せでした」
この5シーズンで多くの選手とプレーされましたが、バックマン選手が刺激や影響を受けた選手というのは?
「アンディ(アンドリュー・エリスアドバイザー)、クーピー(アダム・アシュリー・クーパー)、そして、DC(ダン・カーターアドバイザー)ですね。アンディはとてもユニークな人間で、オフには一緒にビールを飲んで楽しい時間を過ごしました。オフフィールドではふざけ合っていましたが、ラグビーに関しては、経験も知識も豊富で、彼と一緒にプレーできたことは素晴らしかったです。クーピーもワールドクラスな選手で、彼からも多くを学び、影響を受けました。その中で、1番を挙げるとすれば、やはりDCですね。彼のことは、若い時からずっとプレーを見てきましたし、ラグビー界においてレジェンドといわれるような存在です。そのような選手と2シーズン、一緒にプレーできたことは得難い経験になりました」
若手の濱野 隼大選手は、バックマン選手から特にディフェンスの面で学ぶことが多く、影響を受けていると話していましたよ。
「隼大は将来性のある選手で、特にスピードが魅力です。私が若い時に、あれだけのスピードがあればと羨ましくなったほどです。これからも努力を怠らずハードワークしていけば、日本代表でも活躍できる選手になっていくんじゃないかな。『NTTリーグワン2022-23』で何試合か一緒にプレーして、彼の実力はわかっていますし、今後のさらなる成長を楽しみにしています」
冒頭言われたように、『NTTリーグワン2022-23』ではチームは9位という成績に終わりました。優勝したシーズンにあって、昨シーズンなかったものとは何だと思いますか?
「2018年シーズンのチームは、選手、スタッフ間の結束力が強く、信頼関係というところが素晴らしかったと思います。もちろん、昨シーズンも『TRUST』をチームスローガンに掲げ、お互いを信頼しようと言ってはいましたが、やはりコロナの影響は大きく、なかなかオフフィールドで皆が行動を共にすることができませんでした。2018 年シーズンは、日本人、外国人選手関係なく、全員で行動して、オフにビールを飲んだり食事をしたりしていました。そこで絆が生まれて、オンフィールドでも良い結果が出たのだと思います。今シーズンは、コロナによる制限もなくなると思いますし、オフフィールドから全員が行動を共にし、互いを信頼し合って、『神戸ラグビー』で結果を残して欲しいですね」
ラグビーをする上で、オフフィールドでの信頼関係が大事だと?
「そう思いますね。お互いに信頼し合うことでこそ生まれる連携やプレーがたくさんあります。逆に良い選手がどんなにたくさんいても、信頼関係がなければ、ミラクルなようなプレーは生まれない。オフフィールドでの信頼関係は大事だと思いますね。私がこれまでいたチームも、オフフィールドでの結びつきが強い時は良い成績を収めていましたから。今シーズン、神戸スティーラーズが再びそういうチームになって、順位表の最上位になることを期待しています」
「神戸ラグビー」をして結果を残してほしいと言われましたが、「神戸ラグビー」の魅力はどこにあると思いますか?
「選手ひとりひとりが、それぞれが持つ強みや個性を出しながら、相手が予想できないような攻撃をするところが魅力だと思います。アンストラクチャーからどんどんボールを繋いでゲインラインを越え、トライを取っていく。私が入団した1年目、2年目のシーズンはそれがうまくいっていましたね」
そういう魅力的な「神戸ラグビー」をするには、オフフィールドでの信頼関係が必要なのですね。改めて、バックマン選手にとって神戸スティーラーズで過ごした5年間はどうでしたか?
「本当に素晴らしい時間を過ごすことができましたし、神戸という街も大好きでした。チームメイトたちと三宮に行ったり、六甲アイランドで家族とのんびりしたり、最高の5年間でした」
これからチームに期待することや一緒にプレーしてきた仲間に対しメッセージをお願いします。
「今シーズン、デイブ・レニーヘッドコーチが指揮することになり、ブロディ・レタリック、アーディ・サヴェアといった素晴らしい選手がチームに加わります。昨シーズンはタフなシーズンになりましたが、新しいコーチ陣の下でハードワークし、再び頂点に返り咲いてくれることを期待しています。ニュージーランドで神戸スティーラーズの試合を見ることを楽しみにしています。チームメイトに対しては、とにかく感謝しかありません。良い仲間に恵まれて、素晴らしい思い出ができましたし、在籍期間中に第一子が生まれたこともあり、神戸は特別な場所になりました。私や家族をあたたかく受け入れてくれて、本当にありがとうございました。シーズンが終了した時点では、まだ今後について決断することができなかったので、早く皆さんに直接会って挨拶できる日を心待ちにしています」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「2018年シーズンに優勝した時、皆さんと一緒に喜びを分かち合うことができたことは最高の思い出です。ここ数シーズンは、結果が出ずにタフなシーズンになっていますが、皆さんがどんな時でもスタジアムに足を運んでくれて、Steel Matesは世界一のサポーターだと思いました。また、シーズン終了後に行われた今年の『Steel Mates感謝祭2023』は、途中で雨が降るというあいにくのお天気でしたが、最後までグラウンドに残ってくれ、それもありがたかったです。皆様の声援は選手の力になっていますので、これからもコベルコ神戸スティーラーズを応援よろしくお願いします。5シーズン、あたたかいサポートをありがとうございました」