取材日:2022年12月9日
「NTTジャパンラグビー リーグワン2022–23」に向けて
12月17日、2年目のリーグワンが幕を開けます。昨シーズン、7位という不本意な成績に終わったコベルコ神戸スティーラーズは、捲土重来を期すべく、今シーズンはこれまでより3ヶ月早く練習を開始しました。ヘッドコーチには、2012年度からコーチとしてチームを支えるニコラス・ホルテン氏が就任。昨シーズンにはバイスキャプテンを務めた橋本 皓選手がキャプテンを務めることになり、チームスローガン『TRUST』を掲げ、ハードワークしてきました。開幕を目前に控え、ホルテンヘッドコーチ、橋本皓キャプテンに、これまでの強化プランやシーズンに向けての意気込みなどを聞きました。
目標はもちろんリーグワン優勝。 Steel Matesに誇りに思ってもらえるシーズンに。
ヘッドコーチ
ニコラス・ホルテン
NICHOLAS HOLTEN
PROFILE
- 1972年7月10日生まれ。 ニュージーランド出身。 現役時代のポジションは、FL、No.8。ワイカトチーフスでプレーした後、2001年度から2008年度まで東芝ブレイブルーパス(現・東芝ブレイブルーパス東京)でトップリーグ三冠をはじめ、優勝に貢献。 引退後はBL東京や ワイカトデベロップメントでコーチを務め、2012年度からは神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)のコーチとして指導し、今シーズンよりヘッドコーチに就任。
2年目のリーグワン開幕が迫っています。まずこれまでの強化についてお聞かせください。今シーズンは7月19日に練習を開始しました。どのようなプランで強化を進めてきたのでしょうか。
「昨シーズンは、間違いなく良いシーズンではありませんでした。そうなった要因はたくさんあるのですが、1つ挙げるとすれば、練習の内容、質が良くありませんでした。我々独自のスタイルである『神戸ラグビー』をグラウンドで精度高く体現するには、昨シーズンに関していうと、練習の強度などが足りなかったと思います。そこで、今シーズンは、7月から開幕までの期間を4つのブロックに分けて強化を進めました。新しいメンバーも多く加入したこともありますので、まず9月半ばまでの最初の2ブロックでは、神戸ラグビーの理解を深めることやレガシー活動を通してチームアイデンティティを追求することがメインとなりました。グラウンドレベルで言うと、1ブロック目では、神戸ラグビーを体現する上で必要なスキルの練習を行い、2ブロック目ではFW、BKに分かれてユニット練習をし、スキルの落とし込みをしてきました。この2ブロックでラグビーやチームの土台を作った上で、3ブロック目からは試合を想定し、神戸ラグビーのアタックやディフェンスシステムに則り、本格的な練習を実施しました。10月下旬からの4ブロック目では、5試合のプレシーズンマッチを行い、ここでどの選手がリーグワンの試合に出場するのに相応しいのか見極めました」
グラウンドで体現する「神戸ラグビー」というのは、2018年度から変わらずボールをスペースに運んで、どこからでも攻撃を仕掛けるアタッキングラグビーでしょうか?
「もちろんです。昨シーズンよりもテンポの速いアタックで、トライも増やします。チームを応援してくれるSteel Matesや会社の方々、地域の皆様が見ていてワクワクするようなラグビーを展開したいと思います」
ただ、プレシーズンマッチは、1勝4敗という結果に終わりました。プレシーズンマッチで出た課題と収穫をお願いします。
「昨シーズンもディフェンスという課題が出ましたが、プレシーズンマッチでもなかなか改善されませんでした。ボールを取り戻し、アタックにつなげるアグレシッブなディフェンスを目指しているのですが、完成にはもう少し時間がかかりそうです。最後のトヨタVとのプレシーズンマッチでは、前半は良いディフェンスが見られましたので、それを80分間やり通せるようにしたい。また、アタックに関しても、スキルエラーやポジショニングのスピードなどの課題が出ました。ディフェンス、アタックともに試合を通して精度高くやる必要があります。収穫は、新加入選手のパフォーマンスです。神戸ラグビーを理解し、グラウンドで体現するのは簡単ではなかったと思いますが、どの選手も対応してくれて、チームに新しい価値を与えてくれています」
新戦力ですが、プレシーズンマッチではナニ・ラウマペ選手、マイケル・リトル選手の活躍が光っていました。センターは、競争が熾烈ですね。
「ラウマペ、リトルは素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれましたが、彼らだけでなく、ほかの新戦力も良いプレーをしていました。すべての選手が、シーズン中も全員が成長し続けて、すべてのポジションでハイレベルな争いが展開されるようにしていきたいと思います」
2018年度以来の王座奪回がチームの目標だと思います。ホルテンヘッドコーチは、現役時代に東芝ブレイブルーパス(現・東芝ブレイブルーパス東京)で三冠を達成するほか、何度も優勝を経験しています。優勝するために重要な要素は何だと思われますか?
「強いチームには、間違いなく信頼や絆の強さといったものがあります。信頼し合っているからこそ、仲間のことを思って、きつい時にタフなプレーができる。グラウンド内外で信頼して、共にラグビーを楽しめるようなチームが優勝に近づけると思います」
今シーズンのチームスローガンは『TRUST』。信頼です。ホルテンヘッドコーチが、今、言われたように、仲間を信じ、自分たちのラグビーを信頼すると。
「そうです。キックオフミーティングの際に、全員で決めたスローガンです。お互いを信じ支え合い、ハードワークし続けようと、そして、神戸ラグビーを信頼して、選手、スタッフが自分たちの役割をしっかり果たし成長していこうという思いが込められています。今シーズンは、Steel Matesや会社の方々にも信頼していただけるような結果を残したいと思います」
キャプテンの橋本選手、バイスキャプテンの中島選手、李選手に期待することは?
「橋本はクレバーな選手で、神戸ラグビーを完璧に理解しています。それをグラウンドで表現して、プレーでチームを引っ張っていってほしい。李は、日本代表の一員としてテストマッチに出場し成長して帰ってきました。その経験をいかして、神戸スティーラーズでも高いレベルでプレーし、チームにエナジーを与えてほしいですね。中島は明るい性格で、感情をダイレクトに伝えることができます。それに、在籍年数も長く、チームに対する愛情も深い。グラウンドで気迫あふれるプレーを見せ、仲間をリードしてほしいと期待しています。3選手ともに自分のキャラクターを出して、それぞれのやり方でチームを良い方向に導いていってくれればと思います」
今シーズンは、3年ぶりにラグビーフェスタが開催され、プレシーズンマッチも有観客試合で行われなど、Steel Matesの応援の熱量を肌で感じることができたと思います。チームにとってSteel Matesの存在とはどういうものでしょうか。
「Steel Matesは、チームに力を与えてくれる、かけがえのない存在です。この2シーズンは、コロナの影響でなかなか皆様と会うことができなかったのですが、ファンクラブ会員限定の公開練習やラグビーフェスタ、プレシーズンマッチで、久しぶりに皆様の顔を見ることができ、チームはこんなにも多くの方々に愛されているのだと、選手、スタッフ全員、改めて感じることができました。試合中、きつい状況で背中を押ししてくれる存在が、Steel Matesです。特に試合終盤、体力も残っていない中で、スタンドを見たら、真っ赤なウェアを着たSteel Matesが応援してくれている。その姿が、選手の足を前に出させてくれる。1人でも多くの方々にスタジアムにご来場いただきたいですし、我々も良いラグビーをして、Steel Matesを笑顔にさせることができるようにしたいと思います」
NTTジャパンラグビー リーグワン2022–23」に向けて意気込みをお願いします!
「どのチームももちろん優勝することが目標だと思います。我々ももちろん頂点を目指しています。長いリーグ戦では、うまくいく時ばかりではありません。タフな状況になっても、仲間を信じ、神戸ラグビーを信頼し、乗り越えていきたい。Steel Matesをはじめ、見る人たちをワクワクさせるような神戸ラグビーで勝利し、皆様に誇りに思ってもらえるよう戦っていきます。今シーズンも応援よろしくお願いします」
リーグワンでは、お互いを信じ支え合って、80分間、神戸ラグビーを精度高くやり通す!
キャプテン
橋本 皓
HIKARU HASHIMOTO
PROFILE
- 1993年5月17日生まれ、大阪府出身。181cm・100kg。ポジションはフランカー。大阪市立長吉西中学→東海大仰星高校→東海大学→コベルコ神戸スティーラーズ(2016年度入団)公式戦出場回数34。昨シーズン、李 承信選手とともに、バイスキャプテンを務め、今シーズン、キャプテンに就任。
今シーズン、同じポジションの橋本 大輝コーチからキャプテンを引き継ぎました。キャプテンとバイスキャプテン、やはり違うものですか?
「まったく違いますね。中学の時以来のキャプテンですが、リーダーとして先頭に立って仲間を引っ張っていかないといけないと、バイスキャプテンの時以上に気持ちが入ります」
プレシーズンはどのような形でチームを引っ張ってきたのでしょうか。
「グラウンドの中だけでなく、発言でもチームを引っ張っていけるように意識していました。普段の生活から発言については気をつけるようにしています」
橋本選手のキャプテンシーとは?
「言葉もですが、一番は、体を張ることです。誰よりも体を張ったプレーをして、仲間を鼓舞していきます」
キャプテンシーやリーダーシップという点で影響を受けたのは?
「橋本さん(コーチ)ですね。昨シーズン、橋本さんのもとで、バイスキャプテンをし、どういうところに目を向けているのかなど、間近で見て、多くのことを学ぶことができました」
ところで、今シーズンは新加入の選手が多いです。チームにどのような影響がありますか?
「新しい競争が生まれて、良い影響を与えてくれています。11月上旬にチームに合流したクッツェー選手もすぐにチームに馴染んでくれて、優勝という目標に向かって、全員がひとつになることができています」
新加入には、東海大学の先輩である北出選手、同期の五十嵐選手がいますね。
「北出さんとは高校から、五十嵐とは大学から、チームが別々になってからも連絡を取り合っていました。2人のことはよく知っていますし、選手としても素晴らしい。心強い存在です」
チームスローガン『TRUST』は、キックオフミーティングの時に、全員で決めたそうですね。
「これまでは、プレシーズンをかけて、チームスローガンを決めていたのですが、今シーズンは、練習開始日に決めました。ミニグループに分かれて、それぞれ案を出し合って、最終的に投票を行い、『TRUST』になりました。昨シーズン、開幕2連敗を喫し、神戸ラグビーを信じ切れなくて、いつもと違う戦い方をした時期がありました。でも、うまくいかなくて、終盤になり、自分たちのラグビーに立ち返って、埼玉WK、S東京ベイに敗れましたが、得点能力もあがり、手応えを感じたという経緯があります。僕たちの原点である神戸ラグビーを信じて、仲間のこと、スタッフのことを信頼して、支え合っていこうと思い、『TRUST』に決めました」
橋本選手は神戸スティーラーズをどういうチームにしたいと思い、チーム作りを行ってきたのでしょうか?
「チームスローガン『TRUST』の通り、信頼し合えるチームを目指しています。リーグがはじまると、メンバーとノンメンバーに分かれてしまい、全員を同じ方向に向くのは難しくなるのですが、シーズンインしても、全員が信じ合い支え合って成長していけるような一体感あるチームにしていきたいと思います。厳しいリーグ戦の戦いを勝ち進んでいくためにも、信頼し合うことが大切だと思っています」
15年ぶりにトップリーグで優勝した2018年度は、バックボーンと言われるノンメンバーの選手が試合メンバーを支え、試合メンバーもバックボーンの選手のために頑張ろうと、チームが1つになっていました。
「そうですね。この2シーズン、バックボーンが試合メンバーのために仕事をするのが当たり前という雰囲気になっていたのは確かです。バックボーンの選手が、相手チームを想定したプレーをしてくれて練習ができる。ただ、それを当たり前と思うのではなく、試合メンバーはバックボーンに感謝し、バックボーンは試合メンバーのためにやり切ろうと、自然とそう思えるようなチームにならないといけないと思います」
今シーズンは、昨シーズン以上に時間をかけてチーム作りやラグビーに取り組んできました。ただ、プレシーズンマッチは負け越してしまいました。どういう課題が出ましたか?
「初戦の横浜E戦に関してはゲーム感というところで難しい面がありました。その後の試合でも、アタック、ディフェンスともに連携でのミスや規律が守れないといった課題が出て、神戸のラグビーが精度高くできませんでした。そういう意味では、最後のプレシーズンマッチのトヨタV戦は、良いところも悪いところも出ましたが、今までで一番長い時間、神戸ラグビーをすることができ、開幕につながる試合になったと思います。だけど、全員が同じ絵を見て、同じページに立てているかと言われると、まだまだだと思いますので、そこを突き詰めて、共通の意識を持てるようにしていきます」
ところで、個人としては今シーズンどこを強化してきたのでしょうか?
「もともと体重が増えないタイプですので、サイズアップには苦労していたのですが、昨シーズン、食事の回数を増やすなど工夫をして増量に成功し、筋量も増やすことができました。とはいえ、ほかのフランカーに比べると、体が小さい方なので、オフから継続的にサイズアップには取り組んでいます。シーズン中も体重を維持して、持ち味であるタックルに力強さを加え、パススキルをさらに磨き、橋本(大輝)さんのポジションを引き継げるようにしたいと思います」
プレシーズンマッチは、持ち味は出せましたか?
「花園L戦、静岡BR戦の2試合は怪我で試合に出ることができなくて、初戦と三重H、トヨタVの3試合に出場しました。トヨタV戦は久しぶりに80分間フル出場し、個人的には良いタックルもあり、悪くなかったと思います。ただ、今日の試合は良かった、ではダメです。どの試合でも安定して良いパフォーマンスを発揮しないといけないので、リーグワンでは一貫性あるプレーをご覧いただけるようにします」
昨シーズンの第9節東京BR戦で試合終了間際に見せたドミネートタックルを、今シーズンは何度も見せてほしいです。
「そうしたいですね。昨シーズンはタックル成功率もそこまで高くなくて、シーズン通して満足のいくパフォーマンスを発揮できませんでした。タックルミスもせず、プレーの質も上げて、今シーズンは個人としても納得のいくシーズンにしたいと思います」
今シーズンの目標は?
「個人としても、チームとしても、優勝です!練習から良いプレーをし、試合に出て体を張り続け、声とプレーでチームを牽引したいと思います。キャプテンとして、グラウンド内外で、やるべきことをしっかりやって優勝に貢献できるように頑張ります!」
では最後にSteel Matesへメッセージをお願いします。
「プレシーズンマッチではなかなか良い結果を出すことができなかったのですが、課題を修正し、リーグワンでは、お互いを信じ支え合って、80分間、神戸ラグビーを精度高くやり通します。ワクワクするようなラグビーをご覧いただけるようにしますので、スタジアムにご来場いただき、僕たちの応援よろしくお願いします!」